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担当ごとの仕事と判断の境界
通常の有効・無効は担当審判が観察して判定します。すべての試技で審判長の許可を取り直す運用ではありません。主任は審判員の分担・位置・連絡方法を統一し、審判長は抗議や規則上の裁定を扱います。
| 担当例 | 実務と責任点 |
|---|---|
| 主任 | 人員配置、用具・施設の確認、各担当の観察範囲と合図の統一。判断が割れる場合は観察事実を整理する。 |
| サークル・助走路の判定 | 構え、足元、投げ方、着地前の退出、正しい退出を確認。落下地点の担当と結果を合わせて白旗・赤旗を示す。 |
| 落下地点の判定 | 最初の接地点、角度線への接触、やりの頭部先着を観察。旗を別々に上げず、所定の手の合図等で判定担当へ伝え、安全を確保して痕跡を特定する。 |
| 計測 | 起点と内縁を正しく結び、距離を読み、記録係の復唱と照合する。光波等は機器の基準点も確認。 |
| 記録・呼出し・計時 | 本人・試技番号・順番・残り時間を管理。距離と無効・パスを記入し、途中順位を照合する。 |
| 用具回収・安全確認 | 投てき中は着地場所へ入らず、回収後の退避完了を共有する。用具を運んで戻す。 |
競技前の施設・用具の点検
サークルの内径は、砲丸投・ハンマー投が2.135m、円盤投が2.500mです。水平な内面、縁の固定、滑り、水たまり、白線、着地場所の状態を確認します。角度線は34.92度ですが、その線は安全区域の境界ではありません。
白い足留材が正しい位置に固定され、内側の円弧がサークルの内縁に合っているかを確認します。緩みや破損を見つけたまま開始しません。
着地場所の外にも飛び出しや跳ね返りがあり得ます。通行経路、隣接種目、観客の位置を含めた危険範囲を競技会で定め、立入管理と連絡手段を用意します。角度線だけをロープで囲えばよい、という意味ではありません。
- 赤旗・白旗、時計・黄旗、記録用紙、筆記具、メジャーや計測機器、落下痕のマーカー、用具運搬手段を準備。
- 用具を大会の区分・検査済み番号と照合し、承認済みの用具と未検査の用具を分ける。
- 用具の破損・路面や網の異常・人の侵入がある場合は中断し、原因を除いてから再開する。
用具の重さと、付けてよいもの
下表は日本陸連の区分別規格から、記録が公認される最小重量を整理したものです。高校の部とU18の部は同じではありません。表にない区分・混成・マスターズ等を推測で補わず、大会要項で確認してください。
用具の検査は重量だけでは終わりません。各種目の直径・長さ・形状などの寸法、破損や改造の有無を公式規格で確認します。競技会中に用具を変形させたり調整したりすることはできません。
握りをよくする適切な物質は、基本的に手に付けます。ハンマーでは手袋、砲丸では首にも認められます。砲丸・円盤の用具にはチョーク等を使えます。手・手袋・用具に付いた物質はいずれも、濡れた布で簡単に拭き取れ、残らないことが条件です。
やり本体にチョーク等を付けること、用具に唾液や汗を塗ることは禁止です。
サークルや靴に物質をまく、路面をざらつかせる、身体に重りなどの助けとなる器具を付ける行為はできません。靴の外側へのテープには別の条件があり、試技前に審判長へ示す必要があります。手指のテープを主任へ示す手続きと混同しないでください。
| 出場区分 | 最小重量 |
|---|---|
| 男子 一般 | 7.260kg |
| 男子 高校・U20 | 6.000kg |
| 男子 中学・U18 | 5.000kg |
| 女子 一般・高校・U20 | 4.000kg |
| 女子 U18 | 3.000kg |
| 女子 中学 | 2.721kg |
練習から本番へ、安全をつなぐ進行
開始前に、投てき担当・落下地点・回収担当の間で『投げてよい』『入ってよい』『中断』の合図を共有します。白旗による有効判定と、次の選手の開始合図を混同させないことが実務上の要点です。
担当者が着地場所と周辺の安全、用具と競技場所の準備完了を確認してから、次の試技へ進みます。進行中に侵入者や危険を見つけたら中断を明確に伝え、記録係も時計・選手・試技番号を記録します。
着地と正しい退出を確認した後、落下痕を確保して計測します。回収担当は投てきを停止した状態で入り、投げ返さずに運びます。全員の退避と次の準備が済むまで、次の投てきは認めません。
『フリー練習』の時間でも同じ管理が必要です。複数の選手が順番を待つ場合は、用具を振る場所と待機位置を分け、無断の投げ出しや囲い外での練習を防ぎます。
根拠:TR25.1–25.2 / TR32.18 / TR35・TR37
フリー練習・公式練習と試技時間
『フリー練習』は決められた時間内で回数を固定せずに練習する運用、『公式練習』は審判の管理下で順番・回数を定める運用として使われます。ただし名称と内容は大会ごとに異なります。プログラムや競技注意事項で確認してください。
フリー練習も、投げる時機まで自由になるわけではありません。円盤・ハンマーの囲い、投げる合図、回収の手順は練習中も必要です。競技開始後は、用具の有無にかかわらず、サークル・助走路・着地場所を練習に使えません。
サークルや助走路の外で投てき用具を使う練習は、いかなる場合も禁止です。国内では、誤って手から離れると人に危害を与える物を使った練習もできません。安全な用具の準備と、練習の動作は区別します。
通常の投てき試技の制限時間は1分です。残る競技者が2人以上で、同一選手が連続して試技する場合は2分です。担当審判が準備完了を示した時点から扱い、残り15秒は黄旗等で知らせます。
時間内に試技動作を開始していれば、終了までに時間が尽きてもその理由だけで無効にはなりません。
規則違反をせずに動作を中断し、用具を置いて立て直すことはできます。ただし時計は最初からやり直しません。パスは時計が動き始める前に申し出ます。時計開始後に試技しないと決めた場合は無効扱いです。練習の回数と、本番の試技時間は別に管理します。
根拠:TR25.1–25.2・25.17 / TR32.15
投げ方と足留材の条件
砲丸を首元に保持してから片手で押し出す条件は、グライド投法・回転投法のどちらでも同じです。手が構えた位置より下がる、球を肩の線より後ろへ持っていく、前方倒立回転で投げる方法は認められません。
足留材の上端は上面の一部です。『ほんの角に触れただけ』でも、内側の面への接触とは違います。踏ん張りと、投げ終わった後の足の入替えまで確認します。
重複出場は、自分から申し出る
他種目と重なる場合は、選手自身が重複を申し出て、当該ラウンド内での順番変更を求めます。審判が自動的に別の順番を案内してくれる前提にはしません。競技場所を離れるには審判員の許可と付き添いが必要です。無断で離れず、退出時と帰着時にも伝えます。
変更を認める権限は審判長にあります。試技を次のラウンドに持ち越すことはできません。通常の決勝の最終試技ラウンドでは順番変更は認められません。6回制なら6回目であり、4・5・6回目すべてを指すわけではありません。
予選ラウンドと混成競技には例外があります。
無効判定に疑問がある場合は、その場で直ちに申し出ます。距離や痕跡が失われる前に、規則上の抗議として扱ってもらうことが重要です。黙って用具を回収した後では、確認できる情報が減ります。
根拠:TR4.3・TR8.5 / TR25.19 / 2026年正誤表
有効・無効と、投げた後の出方
投げ始めた後、サークルの縁の上面・上部内側の角や、外の地面に身体が触れると原則として無効です。内側の垂直面に触れることとは区別します。
用具が着地する前にサークルを出ると無効です。着地後、最初に縁の上面や外の地面に触れる位置が、サークル中央を通る両側の白線より完全に後方になるように出ます。
前方の白い足留材は、内側の面には触れられます。上面・上端や外側に触れることは無効の対象です。
最初の落下痕が角度線に触れる、またはその外側にある試技は無効です。線に少しでも触れれば内側とは扱いません。用具が転がって止まった位置では判定しません。
例外として、最初の1周目の回転で、白線より完全に後方にある縁の上端や外側の地面へ足が偶発的に触れた場合は、その接触だけでは無効にしません。前方での接触や、2周目以後の接触をこの例外に広げないでください。
緩んだ靴ひもや衣服、落ちた帽子などの接触は、身体による違反と区別します。また着地前に用具が角度線外の物体に触れる場合も判定対象です。囲いへの接触には別の条件があります。
ケーススタディ:何を見て、どう扱うか
以下は判断手順を確認するための架空例です。観察した事実・時点・位置を分けて記録し、見えていないことまで推測で判定しないでください。
| 場面 | 確認と対応 |
|---|---|
| 足留材の角に足が触れた | 上端なら上面として無効の対象。内側の垂直面への接触と区別する。 |
| 落下後に転がって角度線の外へ出た | 最初の落下痕が線に触れず内側なら、その後の転がりだけでは無効にしない。ほかの条件も確認。 |
| 回収者が残っているのに次の選手が構えた | 開始させず、安全が整うまで中断。進行を急がせない。 |
| 有効判定だが計測機器が停止 | 痕跡を保持し代替計測を確認。推定値を記入せず、測定不能なら裁定に必要な事実を報告。 |
| 無効判定に選手がその場で抗議 | 痕跡を消さず、TR8.5に沿って審判長の判断につなぐ。必要な計測を保全し、最終結果の確定を区別。 |
飛距離は、どこからどこまで?
砲丸・円盤・ハンマーの頭部が最初に落下した痕跡の、サークルに最も近いところが起点です。そこからサークルの中心へ向けた線上で、サークルの内縁までを測ります。
測定値は1cm未満を切り捨てて記録します。例えば18.237mなら18.23mです。投げた手の位置からの距離や、用具が転がった距離ではありません。
位置関係を示す模式図です。サークルの中心に向けます。落下後に転がって止まった場所からは測りません。
巻尺・光波で同じ基準点を再現する
落下地点担当は、最初の落下痕を目で追い、ほかの痕跡と取り違えないよう確保します。跳ねた後の穴や、用具の停止位置を起点にしません。有効試技は順位に関係なく計測します。
巻尺のゼロを痕跡のサークルに近い側に合わせます。巻尺をサークル中心に通し、サークル内縁で数値を読みます。足留材の外側やサークル外縁を読む誤りに注意します。
光波等の科学計測では、基準点、測定対象、機器設定、照合値を事前確認します。機器が表示した数字でも、標的の位置や登録した中心が間違えば正しい記録にはなりません。開始前は検査済みの鋼鉄製巻尺と測定値を照合し、機器が適合することを示す確認書を用意します。
終了後も適合を確認します。測定担当と記録担当で読み上げ・復唱を行います。
故障した場合は痕跡を保持して進行を止め、巻尺等へ切り替える条件を確認します。痕跡を失ったまま推定距離を公式記録にしません。やり直し等の裁定が必要な場合は審判長へ事実を報告します。
根拠:TR32.19–32.20 / CR28
記録用紙と順位を照合する
有効試技はメートル単位で小数第2位まで記入し、無効とパスを混同しません。選手番号・ラウンド・用具・判定をそろえてから入力します。次の選手に移る前に、読み上げた距離と記入値を照合してください。記録は少なくとも2人で管理し、ラウンドごとにも照合します。
トップ8の選定と試技順は最高記録だけでなく同記録時の比較も必要です。記録のない選手とパスの多い選手を、紙面の空欄だけで扱わないでください。訂正時は元の値・理由・担当が追える形にします。
| 表示例 | 意味 |
|---|---|
| 18.23 | 有効な試技。1cm未満を切り捨てた距離。 |
| × / X | 無効試技。距離0.00と書き換えない。 |
| - / − | パス。その試技を行わない。 |
| NM | 全体として有効な記録なし。各試技の記入を残す。 |
| r | 途中棄権。パスやNMと区別し、試技ごとの記録も残す。 |
| DQ | 失格。無効試技1回とは別。適用した条文と理由を併記する。 |
| DNS | 出場しなかった場合の結果表示。 |
試技数と順位の決め方
通常の決勝では、9人以上なら全員が3回ずつ試技し、有効な記録を持つ上位8人が、さらに3回行います。8人以下なら原則として各選手が6回試技します。大会によって試技数・進出方式が異なる場合があります。
順位は有効な試技の最高記録で比較します。同じなら2番目、それも同じなら3番目と比べ、すべて同じなら同順位です。投げた距離の合計や平均では決めません。
予選が別に行われる大会では、予選通過条件を確認してください。予選は各選手3回までで、通過標準記録を達成した後は試技を続けません。予選の記録は決勝に持ち越しません。投てきの記録には、短距離走のような追風2.0m/sの条件はありません。
トップ8・試技順・予選通過を確定する
通常の6回制で9人以上の場合、前半3回の成績から有効記録を持つ上位8人を選びます。8位が並んだ場合は2番目、3番目まで比較し、それでも同じなら該当者全員に追加試技を認めます。単純に人数だけで8人に切らないでください。
4回目以降は、前半3回の成績の低い選手から試技します。同成績者の順序は元の順序を保ちます。大会独自の方式が定められていれば、その適用内容を開始前に共有します。
8人以下の場合は各選手6回が原則です。前半3回に記録がない選手の後半の順番など、記録なしの扱いもTR25.6に従います。途中の入力漏れを記録なしと誤認しないよう照合します。
予選では通過標準記録・通過人数を先に確認します。3回以内に標準を達成した選手は、その時点で予選の試技を終えます。標準達成者で人数が足りないときは成績順で補い、境界の同成績は規則で処理します。
公式資料・ルールブック
詳しい条文や、書籍の購入先はこちらから確認できます。
出典と適用範囲
日本陸連2026年競技規則と正誤表を参照し、独自の表現で整理しています。共通事項はTR25・TR32、種目固有の規則はTR33を確認してください。年齢別用具、大会の進行方式、会場の配置は大会資料で補います。
ケーススタディと実務の手順は説明のための運用例です。審判の配置・合図・中断時の連絡方法は競技会で統一し、施設や機器の取扱説明を優先してください。
