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担当ごとの通常業務と判断権限
通常の確認・計測・着順判定を、毎回審判長へ丸投げする運用にはしません。担当者が規則に従って処理し、疑義・抗議・裁定事項を必要な審判長へ渡します。
| 担当 | 通常の仕事と境界 |
|---|---|
| 競技者係 | 出欠・ビブス・靴・持込品を確認し誘導。招集上の未解決事項は招集所審判長へ。 |
| 出発係 | 組・レーン・ビブス・姿勢を確認。準備完了の連絡と指示に基づくカード提示。不正スタートを独自に裁定する担当ではありません。 |
| スターター/リコーラー | 公平な号砲、必要な呼戻し、事実確認。不正スタートの警告・失格の決定はスターター。スタート審判長の権限は別に適用されます。 |
| 監察員 | レーン・妨害の事実を地点ごとに観察し、黄旗等で連絡して書面報告。黄旗だけで失格が決まるわけではありません。 |
| 写真判定員主任・写真判定員 | 機器の動作・基準を確認し、主任が判定員と協同して着順・公式時間を決定。入力・転送・提出を確認。審判長が全着順を最初から決める運用ではありません。 |
| 風力計測員 | 100m・200mの測定開始と10秒間を管理し、組に対応する風力を提出。400mではこの測定は不要。 |
| トラック/スタート審判長 | 報告・証拠・抗議の確認と規則適用。通常の担当審判員や監察員の代役ではありません。 |
根拠:CR18・CR20・CR22・CR23・CR27・CR29 / TR19.19–19.21 / 審判ハンドブック:トラック
号砲前の確認と呼び戻し
スタートチームは、組・レーン・出欠、ブロックの状態、出発係・計時・写真判定等の準備状況を確認します。200m・400mのずらしたスタート位置では、すべての競技者を観察できる分担を事前に決めます。
リコーラーは担当競技者を観察し、不正なスタートを呼び戻してスターターへ事実を報告します。200m・400mで少なくとも2人のリコーラーを置くことは『望ましい』という規定で、一律の義務とは区別します。
スタート・インフォメーション・システム(SIS)の0.100秒未満は、不正スタートの可能性を知らせる情報です。呼戻し後に反応時間や関連情報を確認する手順を経ます。機械の数値だけで自動的に処分する説明にはしません。
スターターの決定に疑義がある場合のスタート審判長の権限と、SIS情報を覆す際の制約はCR18.3で確認します。出発係・監察員が別々の裁定を出さないようにします。
レーンを守る原則と、例外の条件
スタートからフィニッシュまで、割り当てられたレーンを走るのが原則です。特にカーブでは、内側の白線上や、その内側を走らないようにします。『線を一度踏んだら必ず失格』『一歩だけなら内側へ出てよい』のどちらも正確ではありません。
| 場面 | 規則上の扱い |
|---|---|
| 直線でレーン外へ出た/カーブで外側へ出た | 実質的な利益を得ず、他者を妨害しなければ、レーン逸脱だけでは失格としない例外があります。 |
| カーブで自レーン左側の白線へ1歩触れた | 実質的利益・他者妨害なしという条件で、種目の全ラウンドを通じて1回までの例外。2回目は別ラウンドでも失格の対象です。 |
| カーブで、白線に触れず完全に内側へ一歩接地 | 一歩の接地から離地まで白線へ一度も触れず、完全に内側へ接地した場合は、『白線に1歩触れる』例外には含めません。 |
| 他者に押されるなどして出た | 押し・妨害の事実と、利益・他者妨害の有無を確認します。単に自己申告すれば例外になるわけではありません。 |
- 例外を利用して意図的にレーンを外れる走り方は勧めません。
- レーン違反の報告と失格の決定は別です。審判長が報告・事実を確認して適用します。
監察報告は、何をどこまで残すか
地点・組・レーン・競技者・接地した足・線との位置関係・回数を残します。押されたのか、距離上の利益があったのか、他者の進路を妨げたのかも、見た事実と推測を分けて報告します。
カーブの左白線に一歩触れる例外は、種目の全ラウンドを通じて1回までです。予選の違反記録が準決勝・決勝へ引き継がれていないと、2回目を初回と誤認します。担当交代時にも共有します。
足が接地してから離れるまでの一歩全体を確認します。この間に一瞬でも内側白線に触れていれば、『完全に内側へ接地』した場合と区別します。静止画1枚だけで『白線に触れただけ』『完全に内側へ越えた』と断定しません。最終判断は審判長へ報告した上で適用します。
- レーンを使わないレース区間の『完全に越える1歩』の例外を、200m・400mのレーン走へ流用しない。
- 黄旗の提示時刻・報告内容・映像の対応をそろえ、確定前の失格を結果へ入力しない。
判断を取り違えやすい3つの場面
以下は架空のケースです。実際には映像・報告・適用条件を照合して判断します。
| 状況 | 確認してから処理すること |
|---|---|
| 予選と準決勝で、それぞれカーブの左白線に1歩接触 | 各ラウンドで1回ずつ許容するわけではありません。種目全体での回数と、利益・妨害の有無を審判長へ報告。 |
| 電光表示は2人とも10.50 | 写真の胴体の到達位置を確認。表示の一致だけで同着に変更しない。 |
| 選手が『押されて線を出た』と申告 | 押し・妨害、接地位置、利益、他者への影響を確認。申告だけでも、線を出た事実だけでも決めない。 |
写真判定・手動計時・同タイム
写真判定装置はフィニッシュ線へ正しく合わせ、各セッション開始前に、主任が関連する審判長・スターターの協力を得てゼロコントロールテスト等を行います。カメラ位置や映像の読み方は、採用機器の仕様と担当手順で確認します。
写真判定では着順を画像から決め、100m・200m・400mの公式時間は100分の1秒へ切り上げます。手動計時は号砲の音ではなく閃光・煙で開始し、胴体の到達で停止。10分の1秒へ切り上げる扱いなので、両者を混ぜません。
写真でも着順を区別できない場合は同着として扱います。次ラウンドの最後の時間通過枠を決める比較では、1000分の1秒の実時間を確認します。それでも同じなら、全員を収容できるかを確認し、不可能な場合は抽選となります。
表示タイムの一致、画像上の同着、時間による予選通過の同成績は別の問題です。『同じ表示なら同着』『常に1000分の1秒で順位決定』と処理しません。
根拠:TR18.2・TR19.7–19.12・TR19.19–19.23・TR21.1・TR21.5 / 審判ハンドブック:トラック
風力の設置・測定・記入
風力計は直線の第1レーンに隣接し、フィニッシュから50m手前、トラックから2m以内、高さ1.220m(±50mm)に設置します。設置・向き・障害物・通信を事前に確認します。
100mは号砲の閃光・煙から10秒間を測ります。別組の値との取り違えがないよう、組番号と対応させます。
風力は0.1m/s単位で正の方向へ丸めます。+2.03→+2.1、−2.03→−2.0。欠測を0.0で埋めず、対象の組と事情を報告します。
根拠:CR27 / TR17.10–17.13 / 2026年規則正誤表(5月17日)
競技後に結果と未解決事項を照合する
着順・時間・風力の対象組が一致していること、欠場・途中棄権・失格と適用規則番号、進出者が整合していることを確認します。レーン例外の累積記録と、保留中の抗議・監察報告を次のラウンドへ引き継ぎます。
安全上の問題や抗議が発生したら、時刻・競技者・場所・観察した事実・関連映像を保持して担当の審判長へ報告します。現場担当だけで再レースや確定結果の変更を決めず、大会所定の手順へ渡します。
根拠:CR18・CR25 / TR8 / TR17.3・TR20–21
公式資料・ルールブック
詳しい条文や、書籍の購入先はこちらから確認できます。
出典と適用範囲
日本陸連2026年競技規則・5月17日正誤表を確認して独自に整理しています。通常の屋外トラックの個人種目が対象です。ショートトラック・混成競技・年齢区分や大会独自の規定は、共通説明だけで判断しないでください。
審判の役割・運用例は審判ハンドブック2025–2026と訂正情報も参照しました。各節の根拠から条文を確認できます。招集時刻・通過条件・使用機器の仕様は大会ごとの確認が必要です。
