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競技前の打合せ:何を誰とそろえるか
主任は競技注意事項・日程・スタートリストをそろえ、通常業務と委譲事項を担当者へ説明します。次の項目は、当日の条件を一枚の進行メモへ整理するための例です。
- 予選・決勝・混成の区分、試技数または開始高・上げ方、通過条件を確認する。
- 練習の開始・終了、順番・回数、入退場・待機場所を競技者担当とそろえる。
- 呼出し、準備完了、計時、判定、記録、整備・バー再設置の連絡相手を決める。
- 機器不調・雨・強風・抗議の際、まず保持する情報と報告先を決める。
- 最後に実際の配置で合図と記録の受渡しを一巡させ、死角・兼務の衝突を確かめる。
根拠:CR19.1・19.4 / TR25.1–25.2 / ハンドブック:フィールド
用具・配置:バー、白線、マットを一組で確認
支柱の目盛だけで高さを決めず、バー上面の最も低い点を実測します。白線はバーの手前面に対応させます。マットが支柱へ触れ、着地の衝撃でバーを落とす配置を避けます。
| 対象 | 確認する基準 |
|---|---|
| バー | 長さ4m(±20mm)、最大2kg。円形部分の直径30mm(±1mm)。 |
| 支柱の間隔 | 4.000~4.040m。バーの両端と支柱の間にそれぞれ10mm以上の空間。 |
| バー止 | 幅40mm・長さ60mm。滑らかな面とし、摩擦を増す覆い等は使わない。 |
| 白線 | 幅50mm。手前端をバー手前面に合わせ、両支柱から左右へ3m延長。 |
| 国内の着地場所 | 着地場所は幅5m以上・奥行3m以上。マット使用時は幅6m以上・奥行3m以上。国際の対象大会の6m×4m×0.7m以上という条件とは区別。 |
- 寸法を満たすだけで安全点検が完了するわけではありません。連結、隙間、ずれ、表面、周囲の器具を点検します。
- 計測棒、予備バー、旗、時計、記録票、マーカー、表示板の使用状態を確認します。
根拠:TR26.7 / TR27.6–27.10 / ハンドブック:走高跳
担当別:試技中の観察と、次の準備を分ける
判定担当は踏切、基準面への接地、バーの状態を見通せる位置を取ります。左右のバー担当は再設置だけでなく、接触や落下の事実確認も補助します。
| 担当 | 競技中の仕事 |
|---|---|
| 主任 | 担当配置、進行、必要な照合・調整。委譲事項を明確にする。 |
| 判定・旗 | 片足踏切、白線・マットへの接触、バーの落下原因を観察。 |
| 左右のバー・支柱 | 同じ面・向きでバーを戻し、支柱・マットの移動を確認。 |
| 記録・呼出し | ○×-、連続失敗、終了者、次の高さでの試技者を照合。 |
| 計時・表示 | 高さ更新時の人数、連続試技、残り15秒、表示高を確認。 |
根拠:CR19.1・19.4 / TR27後の競技役員チーム解説 / ハンドブック:走高跳
開始高・練習・マーカーを先に決める
競技前に告知された開始高と上げ方を確認し、自分が始める高さを申告します。全員が最初の高さから跳ぶ必要はありません。予定されていない高さを自由に追加する意味でもありません。
フリー練習の時間・範囲と、順番や回数を管理する公式練習の条件は、大会の競技注意事項で確認します。競技開始後の助走区域・踏切場所の練習使用はできません。
主催者が用意または認めたマーカーは2個まで。走高跳では助走区域の中に置けます。他の跳躍と同じように『必ず助走路の外』と説明しません。
根拠:TR26.1 / TR25.1–25.3
重複出場:順番変更と、不在の試技を分ける
重複出場は本人から申し出ます。高さの跳躍の順番変更は各試技に一度で、審判長または事前に権限を委譲された主任・競技者担当が扱います。選手自身が自由に順番を決めたり、終わった高さへ戻したりすることはできません。
離席は担当審判員の許可を受け、審判員の付添いで移動します。帰着も知らせ、現在の高さ・残る試技を確認します。
| 許可された変更後も不在の場合 | 扱い |
|---|---|
| 通常の扱い | 試技時間が過ぎればパス。同じ高さの残りの試技には戻れない。 |
| 国内で事前申告した場合 | 無効試技扱いにできる。3連続失敗に達していなければ、その高さの残りの試技に出場できる。 |
| ワールドランキングコンペティション(WRk) | 国内の無効扱いの例外は使えない。パス扱い。 |
- 無断の離席・通常の不在はTR25.19の別の条件で扱います。すべての不在を同じ記号で記録しません。
- 他の競技者全員が終えても不在の場合は、TR26.2の競技放棄の条件も確認します。
根拠:TR4.3 / TR25.19 / TR26.2 / ハンドブック353頁
バーだけでなく、踏切と白線も見る
踏切は片足で行います。背面跳びでなければならないという規定はありません。跳躍動作によってバーがバー止から落ちた場合は失敗です。
バーを越える前に、バー手前面の垂直面よりマット側の地面やマットへ身体の一部が触れた場合も失敗です。この面は左右へ延長して考えます。白線を踏む接地も見落としません。
ただし、跳躍中に足がマットへ触れても、有利にならなかったと担当審判員が判断する場合の例外があります。触れた場所・時点・影響を確認します。
- 跳ばずに助走を中断した場合、バーや支柱の垂直部分へ触れると失敗。
- 無効となる接触がなく時間が残っていれば、助走をやり直せます。やり直すたびに時計を戻しません。
根拠:TR27.1–27.2
ケース:同記録の比較で、上の高さの失敗を除く
AもBも1m80を2回目に成功。その高さまでの失敗総数がAは1回、Bは2回なら、Aが上位です。その後1m85で両者が何回失敗したかは、この比較に加えません。
1m80で××のあと残りをパスし、1m85で×となった競技者は終了です。記録係は高さごとの欄だけでなく、連続失敗を通して確認します。
根拠:TR26.2・26.8
ケース:バーが落ちた原因は何か
競技者がバーに触れずに越えた後、風だけでバーが落ちた場合、その試技は成功です。『落ちたから必ず赤旗』ではありません。
外力でバーが落ちたその他の状況では、TR26.10の代替試技を適用します。身体が触れて揺れ続けた場合は、跳躍動作と落下の関係を見て判断します。
- 競技者・ポールの接触の有無、風、マットや支柱の動きを担当者同士で確認する。
- 観察事実から規則を適用できる通常判定は担当審判員が行う。
- 事実が不明、判断が割れる、抗議となった場合は主任を通じて審判長へ資料を渡す。
根拠:TR26.10 / CR19.2・19.4
中断・抗議:現場で進めること、裁定を求めること
砂場・マット・助走路に人が残っているときは、担当者が開始合図を待ちます。周囲のトラックのスタートを見て旗のタイミングを調整することも、通常の現場業務です。
既に始まった試技で競技者の責によらない妨害が起き、時間補償や再試技が必要になった場合は、審判長の判断を求めます。機器の転送不良を直すだけの作業まで、一律に裁定待ちにはしません。
判定への異議が出たら、まず何に異議があるかを確認します。担当者が誤判定に気づいた場合の再考と、審判長が扱う抗議の裁定を区別します。
- 痕跡・映像・原記録は、結論を待つ前に保全します。
- 長さの跳躍の即時抗議に伴うTR8.5の保全計測は、国内では主催者による適用を確認します。計測は有効の確定とは別です。
- 報告は『誰の何回目/何m』『観察した事実』『残時間』『保存資料』『何の裁定が必要か』の順に短くまとめます。
根拠:CR19.2 / TR8.5 / TR25.17–25.18 / ハンドブック:フィールド
パスと3連続失敗を、同じ記録表で追う
走高跳は、高さをまたいで3回続けて失敗すると競技終了です。パスは失敗を消しません。成功すれば、その時点で連続失敗は途切れます。
ある高さの残りの試技をパスしたら、その高さへ戻って跳ぶことはできません。次の高さでは、直前までの連続失敗数に応じて試技を行います。ジャンプオフは別の扱いです。
| 経過(架空例) | 次の扱い |
|---|---|
| ある高さで×× → 次の高さで× | 3連続失敗となり終了。 |
| ある高さで×× → 次の高さで○ | 成功。連続失敗が途切れる。 |
| ある高さで× → 残りをパス | 次の高さで許される連続失敗はあと2回。 |
| ある高さを最初からパス | その高さには戻れない。前の失敗があれば持ち越す。 |
- 『一つの高さにつき必ず3回使える』とは説明しません。
- 学校大会等の特別規定を採用している場合は、競技開始前に明示された条件と区別して適用します。
根拠:TR26.1–26.2 / 2026年正誤表
試技時間:人数・連続試技・記録挑戦で分ける
担当審判員が試技を行える状態を示してから計時します。棒高跳は申告したバー位置への調整が完了していることも必要です。各競技者の最初の試技は1分です。
| 単独種目の条件 | 走高跳 |
|---|---|
| 残り4人以上 | 1分 |
| 残り2~3人 | 1分30秒 |
| 残り1人 | 3分 |
| 残り2人以上で連続試技 | 2分 |
- 人数の減少による時間変更は、原則として次の高さから。連続試技の扱いは直ちに適用します。高さを上げても連続なら対象です。
- 通常の人数による時間と連続試技の時間を比べ、長い方を適用します。残り人数にはジャンプオフ参加の可能性がある競技者も含みます。
- 混成競技で最後の1人となった場合は2分です。単独種目の表を流用しません。
- 優勝が決まって最後の1人となり、世界・日本・大会記録等に挑戦する場合は通常より1分延長。別大会の参加標準記録への挑戦と混同しません。
- 残り15秒を黄旗等で示します。時間内に試技を開始すれば完了が期限後でも認められます。計時開始後に単に跳ばないと決めた場合は、事前のパスと同じ処理にしません。
根拠:TR25.17・解説
バーの高さを測り、同じ条件に戻す
地面からバー上面の最も低い点まで、垂直に測ります。支柱の目盛やバーの端の高さだけで確定しません。1cm単位で扱います。
新しい高さへ上げたときは試技前に計測し、バーを交換したときは再計測します。世界・日本記録の挑戦では、高さを測った後に競技者がバーへ触れた場合、次の試技前に再確認します。
- 左右の支柱設定を合わせ、バー止とバーの置き方を確認する。
- 計測器を垂直に保ち、バーの最も低い点を確認する。
- 記録担当・呼出し・表示へ同じ高さを伝える。
- バーが落ちたら、決めた面・向きで再設置し、支柱やマットが動いていないか点検する。
- 優勝が決まる前の上げ幅は2cm以上で、途中で上げ幅を増やしません。全員同意による記録挑戦などの例外はTR26.4を確認します。
- 優勝が決まり最後の1人になった後は、審判員または審判長と相談して競技者が希望高を決めます。混成競技にはこの扱いを適用しません。
根拠:TR26.4–26.7 / CR19.4
同じ高さでも順位が分かれる理由
最も高い成功記録を比べます。同じなら、その高さを何回目で成功したかを比較します。それも同じなら、その高さまでの失敗の合計を比較します。
最高成功高より上での失敗は、この失敗総数に含めません。パスも失敗として数えません。最初にその高さを跳んだ競技者を上位にする規定ではありません。
- 最高成功高を比較する。
- 同記録なら、その高さでの成功までの試技数を比較する。
- なお同じなら、最高成功高を含むそれ以下の高さでの失敗総数を比較する。
- それでも同じなら、1位の決定が必要な場合のジャンプオフへ。2位以下は原則同順位。混成ではジャンプオフを行わない。
- ジャンプオフでは、最後に成功した高さの次の予定高から、各競技者1回ずつ試技します。2人以上が成功したら2cm上げ、全員失敗なら同じ幅で下げます。成功者が1人になれば決着です。
- ジャンプオフをしない事前規定等も確認します。参加せず後から戻ることはできません。国内で上位大会の出場枠を決めるために適用する場合も、すべての同順位に自動適用するわけではありません。
根拠:TR26.8–26.9
記録・呼出し・表示を一致させる
少なくとも2人の審判員が記録を管理し、各ラウンドの終了ごとに照合します。電光表示板に出ている数字だけを、原記録の代わりにしません。
呼出しは競技者番号・氏名・試技回または高さを確認し、次の競技者にも準備を知らせます。長さの跳躍では距離と風力、高さの跳躍では○・×・-と連続失敗を対応させます。
- 判定担当から有効・無効を受け、計測担当の数値を復唱する。
- 競技者・試技回または高さの正しい欄へ記入し、もう一方の記録と照合する。
- 表示担当は確認された値を表示する。保留値や抗議中の値を確定値と混ぜない。
- 訂正は元の記録、訂正理由、確認者が追えるようにする。次の呼出しにも影響がないか確かめる。
根拠:CR19.4 / TR25.8 / ハンドブック:記録担当
公式資料・ルールブック
詳しい条文や、書籍の購入先はこちらから確認できます。
根拠と適用範囲
国内の競技会を基本に、日本陸連2026年規則と正誤表を独自に整理しています。国際規則と異なる箇所、大会で決める事項は本文で区別しています。
競技注意事項・要項・使用機器の仕様は大会ごとに確認してください。「現場の運用例」は分担や手順の提案です。
