担当・主任・審判長の仕事を分ける
通常の有効・無効判定、計測、記録、呼出しは担当審判員が行います。主任は担当を配置し、仕事を調整します。通常業務のたびに審判長の許可を待つ必要はありません。
審判員は自分の判定に誤りがあると分かった場合、再考できます。抗議や上訴で審判長・ジュリーが判断する段階では、確認した事実と資料を提供します。
| 仕事 | 通常の担当・判断者 |
|---|---|
| 開始合図・計時・判定・計測・記録 | 担当審判員。担当間の調整は主任。 |
| 競技区域からの一時離席 | 担当審判員の許可を受け、審判員の付添いで離れる。 |
| 重複出場による試技順変更 | 審判長、または事前にその権限を委譲された主任・競技者担当。 |
| 通常の機器復旧・適合する代替器具での計測 | 主任・計測担当。競技者に不利益な記録処理や再試技が必要なら審判長へ。 |
| 裁量的な再試技・時間補償、抗議の裁定 | TR25.18による判断や抗議は審判長へ。ポール破損など規則に明記された再試技の条件とは分ける。 |
| 競技場所・時刻の変更 | 審判長または技術代表。 |
- 重複出場の権限委譲は、実際に事前に決められていることが条件です。主任なら自動的に全権限があるわけではありません。
- 当サイトの『主審』は、踏切等を判定して旗を扱う現場担当を指します。審判長とは区別します。
確認資料:CR19.1–19.4 / TR4.3 / TR25.18–25.20 / ハンドブック353頁
呼び出す前:試技者と競技区域をそろえる
呼出担当は、原記録で次の競技者と試技回を確認します。欠場、計時前のパス、許可された順番変更、離席中の競技者を反映した進行順を使います。スタートリストの上から機械的に読むだけでは、変更後の試技回を取り違えます。
砂場の整備担当は、痕跡の処理が終了したことを確認して整備します。表面の凹凸、足元に残ったレーキやピン、人の退避を確認し、完了を主審へ伝えます。踏切側は板の固定・粘土やカメラの状態を確認します。
競技者が準備できていても区域が使えなければ、開始を示す合図を待ちます。近くのトラックのスタートと重なるときも、主審が状況を見て旗のタイミングを選びます。審判長へ毎回許可を求める事項ではありません。
- 番号・氏名・試技回を確認し、今回と次の競技者へ知らせる。
- 踏切側と砂場側の準備完了を確認する。
- 競技者が試技できる状態を示し、計時担当と開始を合わせる。
避けたい対応:整備中に時計を始める、変更許可がないのに次の回へ移す、呼出しと同時に自動で計時する。
試技中:見た事実を役割ごとに残す
主審は、踏切の瞬間に靴本体の前部と踏切線の垂直面の関係を見ます。判定カメラ採用時は、靴が地面から離れる前後を対応させます。単に最も線を越えた1コマを探すと、既に離地した足を違反と誤認します。
着地担当は、最初の着地の前に砂場外へ触れていないか、着地時の砂場外接触、退出の最初の足の位置を追います。後方の手の痕跡ができた場合、足の跡だけで退出位置を比較しません。
風力担当は、走幅跳では40mマーク通過、短助走では助走開始を合図に5秒間測ります。読取値を番号・試技回と結び付けます。無効かどうかの判定とは別に、取り違えなく記録できる流れを作ります。
確認できた事実から担当審判員が通常判定。見えなかった動作を推測で補わず、主任と他担当の観察を照合する。
| 担当 | 残すと再確認しやすい情報 |
|---|---|
| 踏切・映像 | 線のどちら側か、接触部位、離地前後、対象映像の番号・試技回。 |
| 着地・退出 | 最も近い痕跡、砂場外へ触れた位置、退出した最初の足の位置。 |
| 時計 | 開始の合図、残り15秒、開始動作、妨害発生時の残時間。 |
| 風力 | 測定開始の条件、値と符号、欠測・機器異常。 |
判定後:痕跡・数値・記録を引き渡す
踏切・着地・退出の確認をそろえて旗を示します。有効試技は直ちに計測します。砂場担当が『この痕跡です』と基準の端を明確にし、計測担当が零点やプリズム位置を合わせます。
巻尺は踏切線またはその延長へ直角に引きます。足が実際に踏み切った位置へ寄せたり、斜めの線で読み取ったりしません。光波・映像計測でも、採用する痕跡と基準線は同じです。
記録担当は、競技者・試技回・距離・風力を復唱して照合します。『数字を聞いた』だけでなく、正しい欄へ入ったことを確認してから痕跡を処理します。抗議・判定保留があれば通常の整備へ移る前に保存します。
- 有効・無効の判定と、計測の要否を確認する。
- 最も近い痕跡の端を定め、採用方式で距離を測る。
- 1cm未満を切り捨て、番号・試技回・風力と合わせて復唱・照合する。
- 記録の受取と保存事項の完了を確かめ、ピン等を回収して整備する。
避けたい対応:表示板の値を原記録の代わりにする、通信欠測を0で埋める、計測値の受渡し前に痕跡をならす。
確認資料:日本陸連2026:TR25・29–30 / 日本陸連2026:CR19・28 / 審判ハンドブック2025–2026:フィールド
ラウンドの切替:通過者と順番を二重に照合する
少なくとも2人の審判員が記録を管理し、ラウンドの終わりごとに確認します。第3回終了時は、全員の最高記録だけでなく、同記録者の2番目以降の記録も使って順位を確かめます。
第8位が最高記録で並んだだけなら、直ちに全員を後半へ進めるわけではありません。2番目以降も比較し、なお同成績の場合の扱いを適用します。表示板が8枠であることを理由に、通過者を削りません。
後半の試技順は、採用する規則と大会方式に合わせて確定します。重複出場で一時的に変えた順番を、以後すべてのラウンドの順番と誤認しません。通常の6回制決勝では、第6回の重複による順番変更は認められません。
残す記録:通過者・比較に使った記録・試技順・未処理の抗議・確認者。変更後の順番は呼出し、表示、競技者への案内を一致させる。
困ったとき:復旧できる仕事と、権利に関わる裁定
巻尺の受渡しミス、表示の転記ミス、機器の通信不良は、担当と主任が原記録・痕跡を確かめて復旧します。担当審判員が自分の判定の誤りに気付いた場合も、CR19.2による再考ができます。すべてを審判長の回答待ちにしません。
一方、正確に計測できず再試技が必要、競技者の責によらない妨害で時間補償が必要、正式な抗議の裁定が必要、といった場合は審判長へ事実を渡します。証拠の保存と、裁定を待つことは同時に進めます。
| 状況 | 現場での対応 |
|---|---|
| 計測機器から記録端末へ転送できない | 原表示を保存し、手動で復唱・照合。適合する代替方式で計測できるか確認。 |
| 表示板と原記録が違う | 原記録を複数担当で照合して表示を訂正。既に案内した順位への影響も確認。 |
| 有効な跳躍の痕跡が失われ計測不能 | 経緯と残る資料を保存し、再試技の判断を審判長へ。推定距離で補わない。 |
| 選手が無効判定に即時抗議 | 痕跡・映像を保持。国内TR8.5の適用条件に従い、権利保全計測等の裁定へ。 |
確認資料:日本陸連2026:CR19・28 / 日本陸連2026:TR25・29–30 / TR8.5
